真冬のスペイン巡礼記

2018年1月、ブルゴスからサンティアゴ・デ・コンポステーラを巡礼してきました。

1/5(金)ブルゴス~オンタナス

1/5(金)ブルゴスからいよいよ歩きだす。

今日から毎日徒歩移動です。

一日に歩く目標は25キロ。サンティアゴ・デ・コンポステーラまではだいたい490キロだから20日でいける。事前に読んだブログの人達とかはだいたい17~20日でここを踏破してるし大丈夫じゃね?

この時は、わりと本気でそう思っていた……。

高低差も一応考えたつもりでいた。実際に歩くと道の状態や天候で疲労度がどれくらい違ってくるかとか、頭の中で考えるだけじゃいかんやつだった。

一応日本で歩く練習もしていたけど晴れた日のみだったから……。

 

朝、六時半位に起きて着替え、軽くメイクする。

(ちなみにこの日を最後に翌日以降帰国まで日焼け止め塗る以外の化粧は一切せず、化粧ポーチは無駄な荷物となり果てた)

昨日のパンの残りを食べて、自販機でカップのコーヒーを飲んで出発したのが八時前。

スペインは日の出が遅いのでまだ辺りは真っ暗。

敷石の印を辿って歩いた、つもりが逆走していて早速迷子になる。

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10分ちょっと歩いてから行き止まりに慌て、地図を見て何か違うと察したもののまだ何が違うか解らない。

スマホの地図とにらめっこしてたら見知らぬおじいさんに話しかけられる。

「カミーノで……」

と言ったら身振り手振りでカミーノはこっちじゃないと言われ、これに沿って歩くんだと来た道を示されてようやく逆走を理解する。

おじいさん途中まで一緒に歩いてくれて、あれが図書館だとか色々教えてくれた。図書館はまだ開いてないけど中で仕事をしてる人の姿は見えて、思わず「こんな朝から働いてるんですねえ」とか言ってしまったけど、暗いだけでもう八時過ぎてたから別に早朝でもなかったしおじいさんにもよくわからんなあって感じの反応をされた。

親切なおじいさんと別れて一人歩く。だんだん街の中心から離れていく。

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街の中心を離れて、でも道路は舗装されているし家や店もまだまだあるようなところを歩き続ける。一度また分かれ道を間違えたけど、ホタテ貝の印を見ないなあと思った時点で即地図と現在地を確認すれば何とかなるようだとやっと分かりだしてきた。

で、また別れ道を間違えたところで後ろから声をかけられる。

他の巡礼者さんだった。昨日宿にいたのとは別の人達。

韓国のHさんと、本人から聞いてないけど多分ドイツのGちゃん。

この後も見かけないアジア系の人を見るとだいたいお互い探り探り声かけたりして、韓国の人はこっちが日本人だと知るとだいたい英語で話そうとしてくれるんだけど私の英語があまりに拙いもんで申し訳ない……。

会話は英語と片言英語とグーグル翻訳。

日本だよと言ったらGちゃんが凄いハイテンションになって、どうやら今朝まで二人はT君っていう日本人の男の子と一緒にいて、その子と別れた途端に別の日本人が出てきたというのがツボにはまったらしい。

どこから歩いてるのって話になって、今日歩き始めって言ったらGちゃんがまたハイテンションの歓迎をしてくれて、Hさんが初日から無理し過ぎないようにねと言ってくれた。

途中の店でカフェコンレチェをテイクアウトして飲みながら歩いて、二人に会った頃はまだ街の中って感じだったのが、飲み終えたゴミをゴミ箱に捨てた辺りを境に完全に何もない土地に。この辺りからメセタの台地なのかなあ。

更に天気も崩れてきて、ぱらぱらと雨が。

暫くそのまま凌いでたけど、さすがに辛いのでトンネル? の下を通った時にGちゃんがザックを下ろしてカッパを着たのを真似して私も着替える。

その時点でHさんは特に待たずに先へ歩いていて、Gちゃんもじゃあねーって感じで先に歩きだして、三人ばらばらになるのを一番後ろで見ながらああみんなこういう距離感なんだなあって納得しつつ私も歩きだす。

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前にGちゃん。更に前にHさん。

私は歩くペースが遅いので二人との距離はどんどん開いていく。

でも次第に強くなる雨のほうが気になっていた。この日は最低気温も5度以上あってまだまだ暖かかったと後から思いだすけれど、当時は雨の中ずっと歩くのはきついって事で頭がいっぱいになっていた。

ほぼ一日中雨は降ったり弱まったりが続いていた。

道路沿いの道から、だんだん車も通らないような道へ変わっていく。

昼食はカフェで、みたいなのを事前に読んでたけどカフェどころか民家もない山道が延々と続く。歩きに来たというよりもはや登山。

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道以外何もないのに時々巡礼向けのベンチや休憩所が出現する。でも冬だからか、水飲み場の水は涸れている事もおおかった。座れる場所ではしっかり座って休んでいるので更に歩みは遅くなる。

 

食事に出来るような店もなさそうだし、という事で途中道から少し外れたところにあった休憩所のベンチで休憩した。雨風凌げるといっても屋根が完全じゃないので微妙に濡れつつ、ザックに入れてあった非常食のビスケットをお昼代わりにする。

(これは元会社の避難袋の中身だった普通の非常食。退職時に自分で処分してねという事になっていて、遭難した時用に持ってけよと言われて笑っていたものが早速役に立つという……)

思ってたよりきついぞ(体力的に)と弱気になりながら休憩していたら、男性数人が歩いて行くのが見えた。こっちに気づいたのか手を振っていたのでこちらも手を振り返す。

彼らの背中が見えてるうちに頑張るか、とまた立ちあがる。

数人いた人の一人が犬を連れてたからこんな所まで散歩の人なのかな、と最初は思った。犬があちこち匂いを嗅ぐもんでその度に止まってて私でも追いつけるペースだったけど、追い越すときに見たら大きなザックを背負ってて同じ巡礼の人だと判った。

(犬を連れるのはわりとよくあるらしく、私が使ってたアプリもよく見れば宿一覧に犬が泊まれるかどうかの記載があった)

犬連れの人は犬が寄り道しない時はとても歩くのが速くて、一時間ぐらいして抜かされてからはもうその日は追いつけなかった。

 

登り坂が続いて俯いて歩きながらもうやだ帰る~みたいな気持ちになっている時に、

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地面にこんなの見つけちゃうと知らない人の気持ちが嬉しくて頑張るぞって思える。

なんかこんな感じで旅の間中ずっと見知らぬ他人の落書きやら足跡やらに励まされてた。

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遠くに町が見えるとほっとする。

でも見えてから着くまでがまた長いんだ。

ここはHornillos del caminoだったかな。出発から20キロぐらいの所。

町に着いたら開いてるカフェがあったのでやっと休憩出来る、と中に入ったらGちゃんと休憩時に抜かしていった男性がいた。

二人とも暖炉で手袋を乾かしたりしてたので私もカフェコンレチェを飲みながら暖炉仲間に入れてもらう。

ザックにカバー掛けてても完璧じゃないのでクレデンシャルがちょっと濡れてて、僕のジップロックあげようかって言ってもらえたんだけど、私もザックの中にジップロックがあるのを思いだして持ってるから大丈夫と答える。

初日から雨とは思ってなくて油断していたんだけど、クレデンシャルとパスポートは以後ジップロックに入れられ、他の荷物もそれぞれ耐水性の袋とかジップロックに小分けにされた。

パスポート・貴重品用の首から提げる小さい袋とか用意してたけど、パスポートは宿で毎回見せるからその度に着こんだ服の下から出すほうが悪目立ちする気がして結局パスポートは財布と一緒にウエストポートの中に入れて、残りのお金半分をしまっておくだけの物になっていた。

二人が発ってしばらくしてから私もまた歩きだす。

残りの十キロに3時間近くかかった。雨は足元も不安になるしやっぱり大変。

オンタナスの町に着いた頃にはもう暗くなり始めていた。

 

Hontanas・San Juan Pilgrims Hostel

宿に着いたらバンギャ魂が目覚めるような曲調の音楽が聞こえて、お姉さんが迎えてくれました。

「貴方で最後?」

と聞かれたような。私より後ろで迷ってるような人はおそらくいないのでイエスと答えておく。

泊まって、晩ご飯も食べる、と答える。泊まりが10ユーロ夕食が8ユーロだったか逆だったか。受付の建物は受付と食事のみのようで、泊まるのはあっち、と道路挟んで向かいの建物に案内してもらう。2階が宿なんだけど外階段を上り下りするだけで足が疲れているのが解る。

部屋のドアを開けたら今日会った人が殆ど全員いた。HさんGちゃん。私含めて七人。犬を連れてる人だけは隣の部屋をわんこと一緒に一人で使っていた。

下のベッドが空いてる所に寝袋を敷いて、濡れたカッパを邪魔にならないように干して、皆ヒーターの前の物干しに洗濯物や濡れた服を干してるから空いてるところにカッパを着る前に濡れてしまっていたズボンを干す。

食事が18時半からなので色々片づけてたらあっという間に時間がきた。

夕食は全員一緒に食堂で。一人だけ微妙にメニューが違うなあと思ったらビーガンなんだそうで。食べていい物駄目な物が人によって違うのは知ってたけどニンニクも駄目な人がいるというのは知らなかった。

 

乾杯~がイタリアとかでは「Cincin! 」って言うらしいですね(この時はスペインかと思ってたけど後で調べてイタリアとかフランス中心に、だった)

言った後、こっちは全然意識してなかったのに「あっ日本の人がいるのにごめんね」とか言われたもんで察してめっさ笑う。周囲が「何で笑ってるのにごめん?」みたいな反応をするので彼が「日本語でCincin!というのは男のね……」とか説明しだしておっさん全員爆笑している。どこの国も下ネタは好きなんだなあ……(そしてどこの国の人も歩きスマホをするというのをこの旅行で知った。旅行者も地元の人も老若男女問わず普通にしてたね歩きスマホ

しかし他の人に話す前に、こっちが嫌がらずにノって笑ってるのちゃんと確認してからネタにしてましたね。そういうところ紳士な人でしたね。

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食事もあらかた終わった頃、隣で電話しだす人がいた。どうやら明日の宿に泊まれるかどうか問い合わせてるみたい。

この時は、犬がいると大変なんだなあと他人事だった。でも途中でホリデーって単語が聞こえてちょっと気になる。

シャワーを済ませて部屋に戻る。ベッドのある部屋はスマホの電波が少し悪い。明日はどこに泊まる~と訊かれてアプリを確認。

明日は今日以上に街が少ない。9キロ、18キロ、20キロちょっとの三つでその先は28キロ地点。雪が降るって予想もあったし、今日30キロ歩いて距離稼いだし20キロちょっとの街にしよう。小さな町みたいだしアプリには一年中空いている宿は一つしか書いてない。ので皆ここにするのかなと指し示したら、「No,close」みたいな返答が帰ってくる。え? 一年中って書いてあるやん、と訊ね返し、難しい話になるかなと思ってGoogle翻訳を起動させるけど、昼間は使えたのに何故か翻訳してくれない。

(結局この後二日間程、先に西英韓の三カ国語はダウンロードしておいたはずなのに何故かネットに繋がっていない場所では使えないという現象に悩まされました)

私があたふたしていたらその人は自分のスマホの翻訳で日本語訳を見せてくれた。それによると、

「明日はスペインのクリスマス休暇の最後の土曜日で、アルベルゲもホテルも休みになる。殆ど全部だ。僕達はここから34キロ先の町にアパート(ペンション的なニュアンス?)を借りてシェアするつもりだ。貴方はどうする?」

……34キロは、ちょっと……だって今日ですら30キロに途中かなり休憩したとはいえ8時間以上かかってるし。

「28キロ先のここの町の宿は開いている。それか34キロだ。他は連絡がつかない。どちらにするか貴方は今決めないといけない」

といって自分のアプリのティタスという宿を示してくれる。私も慌てて自分のスマホでその宿を探す。うん、私の使ってるアプリにも登録あるからとりあえず辿りつけるはず。

「34キロは足が痛いので28キロにします……」

「よし、頑張れ」

クリスマス休暇かあ。だからマドリッドやブルゴスの市街地の夜はあんなに電飾いっぱいだったのかな。

この日より後も15日ぐらいまでは途中のいろんな町でクリスマスの飾りを窓に飾ってる家を見ました。

サンタクロース堂々不法侵入!

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しかし調べた情報をこうやって共有してくれるのはとてもありがたい。

一応アプリの他にもアルベルゲの冬季営業案内一覧みたいなページもチェックしてたけど、全部網羅しているわけじゃないしクリスマスとか一時的なお休みは載ってない事もあって一番正確なのは前日電話、とかになるみたいで。

明日は朝から雪予報。夜になるにつれてぐんぐん冷えこんで、お手洗いで廊下に出るのもちょっと辛い寒さに。廊下で話した人に、東京ディズニーランドで一年だけ踊ってた事あるんだよ、といきなり言われてちょっとびっくりしたり。

巡礼初日なのを知っているHさんが私のリュックを見て、「Heavy!」と言っている。最低限の荷物しか持ってこなかったはず、なんだけどな……でも持ちあげてみて、「意外と軽い。OKOK」みたいな感想だったから重さのわりにかさばる物が多いんだな。

私はまず寝袋を間違えた。スペインも一番寒い時期なので秋冬用の1200グラムぐらいのを持参したんだけど、皆半分ぐらいの体積のを持っている。だいたいテント泊でも床の上に寝袋でもなくてベッドも暖房もあるんだから真冬でも春夏用で十分だった。この後も宿によっては暑くて寝袋の中は下着とかで寝てた時もあったし。

荷物の重さは着替えを全部山装備で揃えてるかとか自炊をするかで全然違う。5キロもなさそうな小さいリュックの人も見たし、自炊用にチーズやジャムを瓶で買って大変な量になっている人も見た。

少しでも荷物を軽くしたくて初日のブルゴスの宿に白紙のノート3冊のうち1冊を捨て、この夜に英語の指さし会話帳を捨てました。スペイン語のほうはカフェやレストランや町歩きで少しは使ったけど、英語のほうは巡礼同士の会話では役に立たないともう判ったので。

でも渡航直前に買って旅行中に読むつもりだったジョシュ・ラニヨンの新刊は捨てていけなかったな。日本に帰って買い直す手もあったけど読み終えても結局好きな小説は捨てられない。あとボールチェーンがちぎれてザックに押しこむしかなくなった小さなカービィのぬいぐるみも捨てられるはずがない。

 

明日は途中休憩出来るところも少ないけど、巡礼に来るきっかけになった本(愛の国/中山可穂)の聖地カストロへリスを通るんだ。楽しみ!!!

期待と不安にドキドキしながら眠りにつくのでした。