真冬のスペイン巡礼記

2018年1月、ブルゴスからサンティアゴ・デ・コンポステーラを巡礼してきました。

1/15(月)オスタル・デ・オルビゴ~アストルガ

朝七時頃に起きる。私一人のアルベルゲで準備を済ませ、用意されてる朝食の中から好きな物を食べるようにという事でコーヒーとシリアルとブラウニーをいただく。

シリアルにかけるのは牛乳は置いてなくて、冷蔵庫の中には豆乳アーモンドミルクココナッツミルク。とりあえずココナッツミルクにしてみた。

ブラウニーもバターじゃなくて他の油で作ったやつらしい。あとフルーツもたくさん置いてあったのでミカンを少し戴いた。

昨日の夕食と朝食は寄付、という事なんだがとても美味しかったしよくしていただいたので最初に考えてた金額より少し多めに入れていく。こういう時にちょうどいいと思える金額を出せないと申し訳ないし、やっぱり適度に細かいお札や小銭を作るのは大切だ。旅の後半はどこでなら50ユーロ札を崩せるかとよく考えた気がする。

誰も来ないキッチンで洗い物を済ませ、8:15頃に外に出るとエドが歩いてきて、裏口を開けてくれた。来た道とは違う方向を指差して、こっちに行けば巡礼路に出られると教えてくれる。畑の真ん中の道を突っ切りながら行くとすぐに巡礼路に戻れた。

エドは昨夜、明日歩くには二種類の道があるけどこっちの自然豊かな道のほうがいい、と熱弁していた。正直私は(また短くて道路沿いの道と自然豊かで長い道か……)と苦難から逃げたい気持ちだったが、よくよく聞くとだいたい16キロと17キロ。1キロしか変わらないんだったらいいや昨日は30キロ歩いたわけだし、とエドがおすすめするほうの道を素直に行く事にした。

今日も足元が悪いのでゆっくり歩くつもり。後で書くけどこれ以降の日程は体調の事などあり、慣れとか色々の事を踏まえるとレオンからアストルガまでのこの二日間がカミーノの中で一番歩く事そのものを楽しめた日だったと思う。前半の何でも新鮮だった足の痛い日々も、後半の人が増えていろんな人と交流させてもらった日々も全部楽しかったけどまあ歩く事自体という意味で。

 

旅も日程的にはもう折り返し地点。今日の目標はガウディの設計した司教館たあるアストルガ。

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 雪は道にはもう残っていないけど、道端の植物には真っ白い霜が降りていて、この幻想的な風景は日が高くなる時間まで続いていた。日陰では夕方にも見られたりした。陽の当たらない奥とかは雪が残ってる場所も少しあって、緑がない代わりに霜が花みたいに綺麗で可愛い。

白と茶色しかない風景が長く続いている。歩く予定の距離はさほどではないけれど、とにかく寒いので座って休もうとしても逆に歩かない事で冷えて体力がどんどん削られていく。

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畑の真ん中にぽつんと立っていた小屋。ドラクエだと無人で宝箱が置いてあるか、一人だけ住んでて情報をくれたりしそうな小屋だなあと思いながら撮影。倉庫か何かなのか、今は人の気配が全くなかった。

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白い部分は殆どが昨日までの雪ではなく霜。気温的に東京や私の地元ではなかなか見られない光景に目を奪われながら歩く。

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飛行機雲! ここに来るまでこんな晴天があまりなくて、飛行機雲も見られなかったから思わず何枚も撮った。

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いきなり人形が立っていてびっくりするような休憩所。

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道の途中、開けた場所がいきなり出てきた。なんかこう、ドラゴンとか出てきそうな水辺の奥に洞窟の入口とかありそうな風景だな素材とか拾いに行きたいな……と日本にやりかけのドラクエ11を残したままだった私は思う。

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昼頃、もう10キロ以上歩いた辺りで突如出現した看板と小屋。

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どうやら巡礼向けの休憩所とか簡易カフェ的な場所らしい。手前の円陣、なんか呪文唱えたくなるやつ。

人の多い時期はきっと賑やかなんだろう。今はここの人らしいお兄さんが何か作業をしていたきりで、私を見かけると韓国語と日本語で立て続けに挨拶してくれたので日本語で返し、休憩はさっき別の場所でしたばかりだったのでそのまま歩いた。

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アストルガの街が見えてきて看板などもあり。しかし街が見えて気が緩んでからザックを置いて休めるまでが長いんだ。

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正直本日最大の難関だった何もない道。何もないんだけど、この日陰の道は雨樋から流れてる水の大半が凍結しているという恐怖の道だった。杖でつつきながら出来るだけ凍っていない場所を慎重に歩いていく。この道を抜けてからもすぐに街には入れず、長い歩道橋を越えてやっと街中に。

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アストルガ

14時頃、アストルガ到着。わりと大きな街だけどアルベルゲは公営しかやっていない。5ユーロ。

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荷物だけ置いて、アルベルゲの設備とかを確認したらすぐに街歩き。チョコレートの街というだけあってチョコの店が幾つもある。街外れにチョコレートの博物館というのもあるようだけど、これはちょっと遠いのと、スペイン語読めないときついと予想がついたのでチョコを買うだけに。普通の板チョコ二枚と苺のやつ(写真右下のと同じ物)買って、帰国後に食べたら苺のチョコが滅茶苦茶美味しくてこれは荷物増えるとか言わずに他の味も全部買っておくべきだったと後悔。あとよく読まずに白いのと黒いのをホワイトとビターだと思って買ったらミルクとビターでホワイトチョコも食べてないのが残念。

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ここが楽しみだったアストルガ司教館!

ガウディの設計だけど色々あって(主にお金とからしい)完成までかなりの年月がかかったという建物。まずは外で写真を撮って、先に明日乗るバス停を確認する事に。

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司教館向かいの建物。ここも素敵。

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バス停に行き、明日のバスの時間を確かめる。窓口に人はいないけどこれもシェスタなのかな? まあ明日行けば乗せてもらえるだろうととりあえず時刻表を写真に撮っておく。

バス停は司教館から近いというか裏手に回ったところだけど、バス停を境に見える新市街(だと思う)は近代的な住宅街ぽい。開発する地域としない地域をしっかり分けてるんだなあ日本だと京都とかそんな感じだっていうよな、などと考えつつ司教館に戻る。

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いよいよ司教館に。ここは絶対観るぞと決めてたから楽しみ。

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庭。

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内部には解説図みたいなものも。司教が住むのを前提の設計だけあって、これまで見た聖堂に比べるとこじんまりとして可愛い。タイルで装飾された壁面とかステンドグラスの窓とか色々撮りながら歩く。アストルガでは巡礼じゃない観光客っぽい人も見かけたけど、私が行った時には他に人はほぼいなくてゆっくり回れた。

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階段を降りた地下は地上階とは違う無骨な雰囲気で、色々資料が展示された小さな博物館の様相だった。

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ステンドグラスの窓際に置かれたテーブルと椅子とか、ここに住む予定だった司教についてやら色々考える。

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 館の中に小さい館の模型もある。可愛い。

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司教館をたっぷり堪能してから外へ出る。来た時とは違う道から帰ったんだったかな。途中のゲームショップに3DS。スペインで感じた日本はレオン手前で見たKAWASAKIの看板とゲームショップぐらいだった。

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アルベルゲに着くと他にも巡礼の人達がいて部屋は賑やかになっていた。白人の男女二人組とおじさん一人、それからJ君H君とまた一緒になった。J君とか私の顔見た途端に「amazing……」とか呟いていて、いやそりゃ私が一日レオンで過ごしたのに今日また会うとか凄いけどさ、30キロ歩いたり頑張ったんよ……などと言いたい気持ちに。

あと昨日感動の別れをしたRさんがまたいました。凄いね会えたねと言いながら握手。

アルベルゲは1階(というか階段上がって入ったから実質2階?)に受付と部屋があり、2階以上は多分閑散期だから使ってなくて、地下(実質1階?)に食堂と洗濯場があり。部屋のコンセントはもう使用中だったから食堂で充電しつつ日記を書いたりしてました。

シャワーは5ユーロだから文句は言わないが冷たかった……風邪引かないぎりぎりのぬるま湯。

冬は人が少ないからどこのアルベルゲも間に合わなくて水、という事はない代わりに、給湯器の限界でお湯が冷たいパターンは結構遭遇した。もう初対面の巡礼同士、シャワーどう? 冷たい? が挨拶代わりになるような……。

冷たいシャワーを耐えて外に出て、後は洗濯。一度も洗ってないズボンをさすがに洗った。

洗濯機を使えばよかったのに小銭を惜しんで手洗いして乾燥機だけ使おうとしたらまあ当然だけど脱水が足りなくて乾かなかったよね……一晩ヒーターの上に干して、翌朝もう一回乾燥機かけて着られました……。

Rさんに夕食どうする? と聞かれ。私は元々外で食べるつもりだったから「レストランに行く」と。Rさん曰く、「最高のパスタを作るつもりだったがこのキッチンは寒すぎるから食べに行く」という事で一緒にどうかと。OKして19時に待ち合わせ。J君H君達はどうかなあと思って見てみたけど既にキッチンで何か始めていたので特に誘ったりはせず。二人は仲良しで和気藹々としていて微笑ましい。

巡礼用のメニューのあるレストランに行く。

ふかしたジャガイモに半熟の卵がかかったやつ。美味しいけどボリュームあり過ぎで普通のサラダにしておくべきだったか……と思いはしたけど全部食べる。スペイン来てからどうせ歩くしと思って食い放題である。

ハムステーキ美味しいし普段食事中に飲まないけどワインとセットのご飯も美味しい。

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食べたついでにRさんと記念写真など撮っていた。Rさんは28日にサンエィアゴ・デ・コンポステーラに着く予定というからもう会えないだろう。私は26日帰国で明日はバスに乗る。

フィニステラに行くのを諦めて、サンティアゴ・デ・コンポステーラ到着その夜の夜行でマドリッドへ戻るような強行軍ならバスなしも可能そうなんだけど、この先はほぼ登山な勾配が続き、巡礼後半最大の難所って場所もある。平らな道でも雪で転んだ私が、万一雪が残っていたら歩ききれるとは思えないので明日からの山はショートカット。

正直言うと帰ってもどうせ無職だし、で帰国便の切符を買い直してゆっくり歩く事も考えた。それぐらい歩くのが楽しくなってたし、クレカとデビットカードと持参してたから可能ではあったけど、ここに来る前に心配してくれたいろんな人に危険はちゃんと避ける、と言ってきた手前雪山(かもしれない山)に突っこむのはやめておく。安全第一。

Rさんも残念がってくれたけれど、飛行機がと言うともうそれ以上引き留めないのは他の人と同じ。皆事情があるからお互い無理は言わない。

食べ終えてさあ帰るかという時、順番に払うものだと財布出して待ってる目の前でRさんにクレカで二人分払われた……いやおい待てや、と言うもまあまあ、で返される。あんまりさっくり払われるから止める間もなかったし店員さんも当然のように会計してるし……。

いや、おそらく10歳ぐらいは年上だしここが日常の場所なら年上に飯を奢られたらにっこり笑ってありがとうが正解なのは判ってるが、カミーノの道中でやられると何か違うんだ……と思うがそこまで微妙な心情を言い表す英語力もないので最終的にはにっこり笑ってありがとうで終わった……。

部屋に帰る。満室で賑やかな夜だった。

明日はバスに乗るからもうJ君H君に遭遇する事もないんだよなあたくさん会ったよなあ……などと思いつつ就寝。