真冬のスペイン巡礼記

2018年1月、ブルゴスからサンティアゴ・デ・コンポステーラを巡礼してきました。

真冬のスペイン巡礼記~はじめに~

2018年1月2~27日にスペインの巡礼路を歩いてきました。

フランス人の道を途中から。ブルゴス~サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼記録です。

 

30代ど真ん中、女性。

海外旅行は修学旅行以来。バックパッカー経験なし。

英語もスペイン語も碌に話せない。謙遜じゃなく機内食の選択でまごつくレベル。

20代の頃のような体力はなく、普段はデスクワークで特にアウトドア趣味でもなく、むしろここ数年はスニーカーすら持っていなかったのに勢いで500キロ歩くとか言いだしてスペインに行って帰ってきました。

そういう人でも安全第一で準備をしていけば何とかなるし超楽しいよ、というサンティアゴ巡礼の宣伝と、後は自分が巡礼の情報を探した時に日本語で真冬に歩いてる人の記録をあまり見つけられなかったので、なにがしかの参考になればと思って記しています。

先に書いておくと、途中日程と天候の都合でバスに乗りました。巡礼後半最大の難所と言われるイラゴ峠~セブレイロをすっ飛ばしています。結果歩いた距離は400キロ弱になりました。

全部歩けなくても、それぞれのやり方で楽しめばいいんじゃない、と思える人向けのブログです。

 

きっかけ

2018年夏。少し前から仕事を辞めようかどうか悩んでいました。

そんな時に中山可穂さんの小説でサンティアゴ巡礼を知りました。

 

愛の国 (角川文庫)

愛の国 (角川文庫)

 

 

記憶喪失の主人公・王寺ミチルが四国遍路とサンティアゴ巡礼の道中で失った記憶と恋人の死の真相を探す話。

ちなみにこの本は三部作の完結編なのでもし読まれるのならば、恋人久美子と出会ったきっかけ、そしてヨーロッパを旅する話でもある前作「天使の骨」を先にお読みになるのをおすすめします。単独でも読めますが前作知ってるほうが絶対にいいやつです。

 

 

 

天使の骨 (集英社文庫)

天使の骨 (集英社文庫)

 

 

読みながら、ああ天使の骨を読んでいた頃はこんな旅がしたいなあと思っていたなと学生時代を懐かしく思いだしたり。当時は一人暮らしかつ学費と生活費を稼ぐのに精一杯で、住んでいた部屋を長く空けて旅行に出るなんて実現不可能な夢でした。

旅の風景や、巡礼特有の雰囲気が気になってこの巡礼路って実在するの……? と巡礼ブログを漁っては読んだ夏の終わり。決まったルートがあって学生から定年後のご夫婦や親子連れまでいて、これなら私でも歩ける? 仕事辞めるんだから行けるんじゃね……という気持ちがムクムク育っていく。

そこから五か月で実際に行っちゃったやつです。

秋、年末に仕事を辞める事を決め、有給が一か月分余ってるから旅に出られるとパスポートを取ったものの、一人で本当に行けるのか迷う日々。

トレッキング用の靴を買い、リュックを買い、寝袋を買い、自分本当に行く気なの、と何度も自問自答しつつ下調べし、少しずつ必要な道具を揃え、ついに航空券を買ったのが12月の初め。

航空券買って後戻り出来なくなってから周りに話し、マジで行くのかとか何があったのとか生きて帰ってこいよとか色々言われたりしつつ、退職前の引き継ぎなどに追われ、結局語学は殆ど上達しないまま出発の日がきました。

 

サンティアゴ巡礼とは

サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路 - Wikipedia

 

一言で言うと聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指して歩く旅です。

聖地へ向かう旅程の全てが巡礼、ですが長い年月の間に整備されてきた何種類もの「道」があり、世界遺産に指定されています。「道」そのものが世界遺産になっているのは今の所ここと日本の熊野古道だけなんだとか。

道中には巡礼者の為のお安い巡礼宿(アルベルゲ)があり、博物館などは巡礼向けの割引があったりします。

私が歩いたのは一番メジャーな「フランス人の道」のうち、マドリッドの北にあるブルゴスからスタートする500キロ弱の道程でした。

始める場所はどこからでもいいのですが、徒歩の場合は最後の100キロは必ず歩かなければ到着時の巡礼証明書を貰えません。

フランス人の道はその名の通りフランスとの国境付近から続く780キロの道です。フランス側にも更に道は続いていて幾つも枝分かれしており、長い人はこの道を千キロ以上歩いて聖地に辿りつく事になります。実際私が道中に会った日本人の大学生の男の子はイタリアからずっと歩いてきたと言っていました。

一番メジャーとはいえ、巡礼者自体が少ない1月ですから殆ど他の人に会わない日や、巡礼宿に着いたら私一人という日もありました。

また、泊まるつもりだった宿が閉まっていて予定外の距離を歩く事もありました。下調べしても予定外の事はある。

 

転職のタイミングで取れる長い休暇を巡礼に使おうと決めたのは、旅慣れていない私でも行けそうと思えたから。特に費用面と安全面。

 

費用面。大体の巡礼宿は5~15ユーロ、大きな街でも20ユーロあれば泊まれます。ここに10ユーロ足せばワイン付きの晩ご飯がセットになったりします。とにかく安い。両替時1ユーロ134円ぐらいで、一日の食事と宿で三千円しない程度で済む日も多かった。夕食を自炊したらもっと安くなる場合もあるんだと思いますが、食材を持ち歩くのも重いので私は最初から自炊はしないと決めて全て外食でした。

街中の飲食店でも巡礼者向けメニューというのがあったりして、10~13ユーロぐらいでワイン付きのボリューミーな食事が食べられました。

最初と最後のマドリッド泊、後巡礼途中で二回程ホテルにも泊まりました。それらと航空券と全部含めて25日間で20万掛かっていない(リュックや靴など装備品を除く)ので、ヨーロッパ旅行としては破格だと思います。これは道中食べたい物は特に我慢せず、お土産(家族にお菓子程度)とか、帰り際に空港で買物してユーロは使い切るぞ、とかも含めた結果なので節約すれば後数万円は安く出来ると思います。逆に大酒飲みはもう少しかかるかも。

 

安全面。巡礼はコースがあり、現在地付きで道案内してくれるスマホアプリもある。巡礼宿も登録されていて探しやすい。もちろんアプリに頼らず紙の地図で歩くのもありだと思うし、そういう人もいた。

play.google.com

ある程度定まった道があり、方向音痴でも道端の標識(とても判りやすい。だが私は何度も間違えた)に従って歩けばいつかは目的地に着く。道が決まっているので目的地だけを決めてバックパッカーするよりは計画を立てやすく、道中の宿もアプリ等で事前に値段や評価を確認しながら探せた。

巡礼宿に泊まるにはパスポートの提示の他に「巡礼手帳(クレデンシャル)」が必要。最初に数百円払って作るスタンプカードみたいなもので、行く先々の宿やバルやカフェでそれぞれスタンプを押してもらうので、巡礼者がどこから来てどれぐらい歩いているかそれを見れば一目瞭然。なので、巡礼宿は巡礼者以外の怪しげな人が入りこみにくい。

(実際は犯罪皆無なわけがなく、特に大きな街などでは巡礼者狙いの盗難などあるという話も聞いていたのでもちろん警戒はしていましたが、宿など泊まる際は同じ聖地を目指す人ばかりというのは安心に繋がりました)

 

同じ本に出てきた四国遍路もいいかなと迷ったのですが、やっぱり一番の決めては安価な巡礼宿があった事かな。お遍路は泊まる場所が結構高くつきそうで、読んだブログなんかだと野宿込みで回ってる方もいたけど、さすがに女性の野宿や単独キャンプは国内であっても安全面考えたら難しい……総費用があまり変わらないか下手したら四国のが高い……ならいっそ国外行っちゃうか、という事でスペインに決めました。

 

次回からが実際の旅行記です。