真冬のスペイン巡礼記

2018年1月、ブルゴスからサンティアゴ・デ・コンポステーラを巡礼してきました。

1/7(日)ボアディージャ・デル・カミーノ~カリオン・デ・ロス・コンデス

6時に起きる。昨日のコーヒーとお菓子代2.5ユーロを宿代に追加で払い、今日は昨日の分を取り返すように歩くぞ、みたいな気持ちで7時にはアルベルゲを出た。

まだ真っ暗。ヘッドライトを点けて歩く。巡礼路の印も見えにくくて色々照らしたり脇道にそれちゃったりしていたらご近所の犬を起こしてしまったようで、思いきり吠えられて慌てて走る。走って、気づいたら手袋を片方落としていた。なので以降は予備に持ってきていた軍手を着用。

(まあ、実際は犬は柵の向こうの庭にいたので逃げなくても安全だったんだけど暗い中で響き渡る吠え声が怖くてね……)

9時頃に最初の町、フロミスタに着いたのでトルティージャとカフェコンレチェで朝ご飯。昨日の夕食を取り戻すかのように食べる。卵と芋の組み合わせはなんでこんなに美味しいんだろう。

今日のルートは途中に小さい町が幾つもあるので昨日よりは気が楽。

昨日程の山道ではないし、時々車も通る道なのでそれだけで安心感があってほっとする。やっぱり悪天候で寒くて自分以外誰もいないというのは心によくない。対向車線を走ってくる車の中には時々こっちを見つけて手を振ってくれる人もいた。

朝食の街を出た時点で少し雲行きが怪しくなってきたので上からカッパ上下を着こむ。本格的に降ってから着ると中で蒸れるから早めに着るのが大切、って初日に思いしったからきっちり着たのに結局この日は午前中ほんの少しぱらついただけで夕方まで降らなかったという。

巡礼路の印と、鹿注意の標識と、レオン州だよって看板が揃っていた風景。

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途中で韓国人の男女二人組を見かける。追い抜く時に挨拶して、その後追いつかれる気配が全くなかったからかなり遅い私より更にスローペースで歩いているみたい。きちんとつきそってもらっていたけど女の人どうやらかなり疲れているようで大丈夫かな、とちょっと心配になる。

 

14時頃。ずっと歩いていて町に入ったもののカフェが見つからない。お腹空いたし座って休憩もしたいなー、とやっと見つけた開いている店に入ったらカフェじゃなくてパン屋さんだった。

でもパンは美味しそうだし飲み物も売ってるし、店内で食べていいよと言ってくれるしでエクレアを二つと缶のファンタオレンジみたいな飲み物を買う。店内の椅子に座って、カスタードクリームうめえ……と休憩してからまた歩きだす。と、さっきの二人組の男性のほうが走ってきて、今日はどこまで行く予定? と聞くのでアプリの宿を見せて答える。

じゃあ後でまた、みたいな事を言ってすぐに戻っていった。もしかしたら開いている宿を確認したかったのかもしれないなと後から思った。

 

Carrion de los Condes

夕方頃に公営のアルベルゲで唯一開いていた所に着く。

 ホスピタレイロはおばあちゃんで、アルベルゲを探していた時に会ったお兄さんと一緒に受付を済ませる。カトリックの巡礼路だから本来は当たり前なのかもしれないけど十字架やキリスト教モチーフの物が受付の部屋には幾つも置いてあって、それまではあまり見なかったから逆に新鮮だった。

この町は修道院に泊まれるアルベルゲもあったみたいなんだけど、冬はやっていないそうで残念。

部屋は幾つかあるみたいなんだけど、あんまり人もいないので大部屋一つを全員で使う。全部で十人ちょっとになったのかな。

ベッドは二段ベッドじゃなくてシングルが並んでていて、花柄のカバーが掛かってて、古い少女漫画にありそうな雰囲気。悪くないんだけど二段の上がない状態はなんだか視界が開けっぴろげな気がして逆に気になってしまった。

Gちゃん他見知った顔が何人かいる。

早速昨日出来なかった充電をしようとコンセント確保……また刺さらない。

このコネクタ、やっぱり規格サイズよりギリギリでかいんじゃないか。あと少し小さかったらぴったりなんだけどプラスティックじゃ無理矢理押しこむのは不可能だしヒビでも入ったら危なくてもう使えなくなるし……。

あと1ミリ小さかったらなあ……と思ったところでネイルファイル(爪やすり)を持っているのを思いだす。艶出し用じゃなくて長さを整えたりジェルを削れる荒いやつがある。

使えるかなと思って試してみたらちゃんと削れました。ベッドの上でゴミ箱抱えてコンセントプラグのコネクタを削る。がりがり粉が飛び散って数分後には問題無く充電出来るようになりました。以後充電出来ない問題は解決。

いつもしてるジェルネイルが取れかけた時のケア用だったけど、実際は取れてきたら爪切りで爪ごとばんばん切っていったので巡礼中に削ったのはこのアダプタだけ。でも役にたったので化粧ポーチに入れっぱなしにしておいてよかった。

暫くしてから途中で会った二人組の韓国人のうち男性だけが到着。今日ここに泊まってる中に何人か知りあいがいたみたいで、後で女性のほうは歩けなくて一旦離脱、みたいな事を言っていた。さっき会った町からはタクシー呼べたし、かなり辛そうだったので確かに無理せずちゃんとした場所で休んだほうがいいんだろうな。私も歩ききるのが目標だけど、それ以前に健康な状態で帰国しないとな、と改めて思う。

三日あるいて足はがくがく。筋肉痛を通り越して地面に足をつくと太腿に痛みが走るというか、片足で体重を支えたり階段を上り下りするのがもう重労働。平地は歩きだせば勢いで進めるけど一旦宿に着くともうまともに歩けない。生まれたての子鹿状態なのを他の人にも大丈夫かと指摘されたり。リュックを下ろすと逆に背中が軽すぎて、足の痛みと上半身の軽さで身体が上下バラバラになったようなふわふわした感覚がある。

 

ここはシャワー・トイレは男女別。女性は私とGちゃんだけなので気兼ねなく使える。洗濯はヒーターあるけど数が限られてるのでたくさんは干せない。靴下だけ洗って、雨は降ってないけど一日カッパを着て蒸れたズボンをヒーターの無い物干しに掛けておく。

夕食はない宿なのでどこか外で食べないといけない。それに明日の朝ご飯も出来ればどこかで買いたいところ。

スマホで近くの店を探す。バルやレストランはやっているけど、日曜だからか他の商店は休みらしい。だったら明日の朝少し遅めにして、カフェが開いてから出発かなあ。

隣の男性が一番年齢が近そうに見えたので晩ご飯に誘ってみる。というか一緒に行ってくださいって気持ちだ。一緒に行く子がいいならいいよ、という返事をもらい、その後4人で近くの店に夕食に。

カッパを一日着ていてさすがに蒸れた昼間の服は干してきたので上ダウン下スパッツ。部屋着としてはちょうどいいけど外に出ると寒い。

 

最初に入った店がちょっと高かったので頼まずに出て、巡礼者向けメニューのある店に入り直す。

ここは確か11ユーロで料理二皿+ワイン(か水)とデザート付き。

だいたいどこでも2~3種類のメニューから皿ごとに選べるようになっていて、店によってはコーヒーまたはデザートが付く。

一皿目はだいたいオードブル的な扱いだけどそれでもどんぶり一杯のスープやら山盛りのジャガイモ+卵やら出てくるので慎重に選ばないと胃が大変な事になりかねない。

野菜サラダ+ミートソースパスタ、にしたけどこれでもボリュームが凄かった。サラダも居酒屋で取り分けるサイズみたいなのが一人分でツナやらコーンががっつり入っているので日本で何の運動もしない日ならこれだけで夕食になる量。

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パスタ。とても美味しいが二人分ぐらいある。さすがに多過ぎ。

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 一緒に行ったのは全員韓国人のHさんと学生コンビH君J君。注文がうまくばらけて皆別々のものを頼んでた。だいたい皆食べ終える頃にはもう無理じゃねとか言ってるのに、デザートにアイスがあると元気になる。っていうか昼間寒い寒いと言い続けても、暖かい部屋で食べるアイスが美味しいのはどこでも一緒だねえ。

Hさんは社会人。学生二人は長期休みを利用して来ているらしい。二人のうちJ君とはこの後の道中や宿で何度も会う事になる。

私は仕事辞めて来たよーって言い、悪い事ではないのよという意味でグッバイマイワークス、とかふざけて言ったらH君がグッバイマイユニバーシティ、とか面白がって返してきたのでそれはいかんだろと思わず日本語で突っこんだ。学生さん頑張れ~と思った。

発音が難しくて聞くだけじゃ名前を覚えられないと思ったので、よかったら紙に書いてとペンを渡したらそれがJETSTREAMだというのでなんか盛りあがる。韓国でもこれの細字のやつよく使うよーとか言っていた。

「今日ユキさんが歩いてるところ見てたよ。全身オレンジだから目立つねって二人で話してた」

「オレンジはカッパだから。レインコートだから趣味とは違うんだ……」

みたいな話もしたり。私は上下分かれたカッパを着てたけど、多く見かけたのはリュックごと被せられるポンチョタイプだった。リュックはレインカバーを掛けていても一日中雨だと肩紐のところとか隙間から少しずつ沁みていくからポンチョ型も便利でいいなあと思った。ポンチョと下はレインパンツの組み合わせにしたらよかったなあとか道中何度か思ったりした。

雑談しつつ自然と翌日以降の予定やどこまで歩く、の話になる。

私以外はわりと皆マイペースかつ帰国日までに余裕のある旅らしく、26日の飛行機で日本に帰ると言うと結構大変そう、みたいな顔をされた。

私も今日までの3日間で、一日25キロを延々続けるのは難しいなと思うようになっていた。歩くだけなら不可能ではなさそうだけど、まず宿がたくさん閉まっているこの時期に、うまくペース配分出来るように旅程が組めるかどうか。それに、夜の遅いスペインとはいえ冬は18時を過ぎるとすぐに日が沈んでしまう。着いたら夕方というのがずっと続くと観光どころか街並みを楽しむ事もろくに出来ない。

サンティアゴ到着後に余裕があればフィニステラやムシアへも行きたいなと思うけど、その日を作るためにはどこかでバスに乗るなりする事も考えないといけないのかもしれない。

既に明日の時点で25キロは歩けないのが分かっていた。

明日はほぼ平地だけど、この町を出たら次の町まで17キロ何もないまっすぐな道が続く。夏は道の脇に巡礼者向けの臨時のカフェが出たりするらしいけど、冬はそんなものないのはもう分かっているので明日は何が何でもこの町で朝食を摂らないと。

その先の小さな町のアルベルゲは冬は閉まっていて、次にこの時期でも泊まれるのは30キロ先の町。17キロか30キロか。出発前に決めておかないとペース配分も違ってくるし。

もう一つ、この町から枝分かれする旧巡礼道(?)みたいなところもあったけど、宿情報も少ないし不安なのでやめておいた。

17キロ歩いて余裕があったら30キロ歩くね、と言う。もうここで30キロ行くぜと言えない時点で疲労を自覚してはいたのだけれど。